紳士の着こなし術 パンツ編

紳士の着こなし術 パンツ編

 前回ジャケットをご紹介しましたので、今回はスーツやジャケパンスタイルの時にジャケットとの相性が非常に重要になってくるパンツについて触れていきたいと思います。

 普段私たちが使っているこの「パンツ(Pants)」という言葉は、アメリカ英語のしかもカジュアルな言い方になり、正確な英語では「トラウザーズ(Trousers)」と言います。ただこちらではわかり易いように馴染のある「パンツ」を使用していこうと思います。

 少し余談ですが、実はこのパンツがファッションとして広がっていったのにも様々な歴史があります。
有名なところですと、フランス革命当時パンツは労働者階級の人々の履くもので貴族はキュロットという半ズボンのようなものを履いていたのですが、革命時に貴族が市民から襲われることが度々あったので、身を隠すためにパンツを履いていたそうです。このことから、この革命期の民衆のことを「サン・キュロット(フランス語でキュロットを履かない人)」と呼んだそうです。そしてそれを見たイギリス貴族によりこのパンツスタイルは、イギリスへと伝わっていったそうです。
といったようにパンツに関するおもしろい歴史はまだまだあるので、気になった方は調べてみてくださいね。

 さて本題であるディテールについて少し紹介していきたいと思います。ただしすべての種類をご紹介するとなるとかなり膨大な量になってしまうので、今回はスーツ、ジャケットスタイルに合うパンツをご紹介したいと思います。

まずは見た目にも、着心地にも影響してくる、パンツのタック(プリーツ)についてです。
これはパンツのウエスト下部分にある生地を折りたたんで作ったひだのことです。 

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最近ではこのタックが一つ入った「ワンタック」のものか、タックの入っていない「ノータック」のものが主流となってきています。
上の写真のものがワンタックで次にお見せするのがノータックのものです。

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ではなぜこのタックは必要なのかといいますと、まず第一に先ほども申しましたが、「着心地」です。
タックが入る分腰回りにゆとりができるので、動きやすくなります。では元々ゆったり目にパンツを作ればいいとお思いの方もいるかと思いますが、そうしてしまうと非常に見た目が不恰好になってしまいます。なので正確にはタックというのは「ゆとりを作った時に不恰好にしない為のもの」といってもいいかもしれません。
当然着心地だけでなく見た目にもゆとりがでてくるので、ピッチリ感を防いでくれます。しかもタックが入っていた方がパンツにドレープ感を出してくれるので、エレガントさを引き立ててくれます。
なのでパーティー用や、大事な場面で着るスーツではワンタックのほうが実は理想的なのです。

反対にノータックのものは生地のゆとりがない分、非常に見た目をすっきりと見せてくれるので、特に若い方に好まれます。ただしそのゆとりがない分着心地はタックの入っているものと比べるとどうしても窮屈感があります。
ですのでお腹が出ている方や小太り体型以上の方にはお勧めはしません。
見た目をスマートにまた若々しく見せたい方はノータックを、エレガントさや貫録、余裕を見せたい方はタックがあるものを選ぶのをお勧めします。

 続いてこちらも見た目に非常に関わってきます、パンツの『』部分についてお話ししたいと思います。
スーツを買われたことのある方なら、店員さんに「裾の仕上げはシングルになさいますか、ダブルになさいますか?」と聞かれたことがあるのではないでしょうか。このシングル・ダブルとは何のことかと申しますと、裾の部分の仕上げの仕方で、「シングル」はそのまま裾部分の生地を裏で縫い合わせる方法で、「ダブル」は裾部分で一度生地を折り返しカフスを作る方法のことを言います。
と、言葉では分かりづらいと思いますので写真をご覧ください。

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上が「シングル」、下がダブルとなります。

 ではこの二つの違いはと申しますと、まずシングル仕上げのほうがクラシックでエレガントなスタイルであるということです。フォーマルなシーン、冠婚葬祭などではシングル仕立てを着ていないと恥をかいてしまうこともあるのでご注意を。シングル仕立てのパンツにワンクッション、ツークッション(*クッションとはパンツの脛部分にできるシワのこと。一つシワが入っているものをワンクッション、またシワが入らないほど裾をカットしたものはノークッションとなります)入っているものは本当に上品です。
 ではダブルはと申しますと、こちらは少し砕けた感じでジャケパンスタイルや、ビジネスでも普段使い用として用いるといいでしょう。
このダブル仕立てには様々な由来がありますが有名なところですと、昔イギリスにて、雨の日に地面がグチョグチョの中をパンツの裾を折り返して歩いている御仁をアメリカ人記者が目撃し、「これが今イギリスでの流行なのか」とアメリカに持ち帰ったのが始まりといわれています。
なのでダブルはフォーマルというよりはスポーティーなイメージや軽快さを出したい時などは非常に効果的になると思います。
 また気を付けたいのが、ダブルのカフス部分の大きさ。アイビールックが流行ったときはカフス幅が「3.5㎝」というのが主流でしたが、今は大体日本人の体型ですと「4~4.5㎝」がバランスがいいとされています。自身の身長や体型、またスーツのスタイルにもよってきますので、購入するときに店員さんに相談してみるのもいいでしょう。
また先ほどのクッションについても、ダブルですとノークッションかワンクッションにしておかないと裾部分が非常にもっさりとなってしまう恐れがありますのでこちらもご注意を。
 
そうそう最近見かけるのが、流行だからといって細身の腰履きパンツをみじか~くカットして、ダブル幅をこれまた5㎝ぐらい太目にして履いている方。
身長が高くすらっとした体型の方でしたらモード感もばっちりでカッコいいんです。ただそうでない方がしてしまうと、どうしてもダブル仕立てというのはカフスの影響で裾で寸止まり感がでてしまうので腰履きと相まって非常に短足に見えてしまうんです。
こんな話ばかりしてますと、シングルにしていた方が安心じゃないかと思われると思いますが、しっかり自身の体型にバランスを合わせてダブル仕立てのパンツを履くと本当にかっこいいですし、シーンや装いによってシングル・ダブルを使い分けれるようになると周りも「この人はオシャレな人だな」と認めてくれますので、是非挑戦してみてくださいね!
もちろん私もいつでも相談に乗りますので☆
 
 そして裾に関してもう一つ!こちらは特に洋服に詳しい方以外はなかなか気が付かないところですが、裾のです。

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この裾幅は、パンツを台の上などに平らに置いた時の裾部分の片面の幅の長さを表します。
因みに昔ながらのクラシックなものですと大体裾幅は22㎝~24㎝といわれています。
ただはっきり言いますと最近では24㎝ともなるとほとんどモードブランドがデザイン性として用いるくらいで、お店でスーツを探しても太くて22㎝位が一般的になってきています。
ですので今はクラシックなスタイルをしたい方は20㎝~22㎝、スタイリッシュさや若々しさを出したい方は18㎝~19㎝で選ばれるといいでしょう。
18㎝以下になってくるとこれはかなり細いのでやはりモードやカジュアルスタイルなってしまいますのでご注意ください。

 最後にこのパンツのディテールはジャケット等上着とのバランスも非常に重要になってきます。折角高いスーツを買っても上着とパンツのバランスがいまいちだと格好悪くダサい感じになってしまったり、カッコいいパンツを買ったはいいが、タンスにあるジャケットと合わせたら何だか違った…ということもあります。ですのでどうしてもわからない時や迷ってしまう時は恥ずかしがらずに店員さんに聞いてみるのもいいでしょう。

 今まで何の気なしに履いていたパンツにも今回ご紹介させていただいただけでもこれだけ細かい違いがあるのです。
結構細かくてそんなの周りも気が付かないんじゃないかと思われるかもしれませんが、意外と見ている方は見ていますし、見ていない方にも自然とあなたのイメージを印象付ける要因になっているんですよ。

 ジャケット、そして今回のパンツと読んでいただき、こういった細かいディテールやこだわりが各個人のアイデンティティとして装いに表れてくるということが少しでもわかっていただけたら幸いです。

 紳士服のスタイルは限られている、だからこそ奥が深いんですね。

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