紳士の着こなし術 ジャケット編

紳士の着こなし術 ジャケット編

 ここではスーツ・ジャケットスタイルで最も重要かつ第二の顔ともなるジャケットの着こなし方についてお話させていただきます。
皆様はスーツを代表とするジャケットを必要とするスタイリングにはどのような印象をお持ちでしょうか?「カッコいい?」「大人っぽい?」「真面目?」はたまた「堅苦しい?」「重たい?」「難しそう?」、様々な印象をお持ちでしょう。今はどんな印象をお持ちでも構いません、きっとここを読んだ後あなたもジャケットに袖を通したくなりますよ。

 まずはジャケットの中でも印象を決定づける役割を果たすラペルについてです。ラペルとは何かと申しますと、つまりはジャケットにおける襟の部分です。

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襟の上部分をカラーと呼び下部分をラペルといいます。因みに間にある縫い目の線をゴージラインと呼びます。
ここでは代表的な形を3種類ご紹介したいと思います。

1. ノッチドラペル

ノッチとは「V字型の刻み」という意味で、この形が最も定番の形で皆様も一番見覚えのある形と思います。上にある写真がまさにこの形ですね。

2. ピークドラペル

ピークドとは「先の尖った」という意味で、ラペルの先が鋭く尖った形をしています。フォーマルスーツやダブルのジャケットに多く見られます。
胸が広く厚く見えるので、重厚感であったり男らしさを演出してくれます。

3. ショールカラー

いわゆる「ヘチマ襟」という形です。この形は独特で上襟と下襟が繋がっておりヘチマのような曲線的なラインを描いているので、首からショールをかけたようなエレガントさがあります。タキーシド等正装にも多く見られる形です。

他にもいくつか形はありますが、基本的にはこの3種を知っていれば大丈夫です。

またラペルの幅は各ブランドやシーズンによって違ってきますが、基本的には8㎝~9㎝がレギュラーラペルでそれ以上がワイドラペル、それ以下がナローラペルとなってきます。
ワイドラペルは比較的クラシック系に多く見られ、ナローラペルは一般的にはモード服といった印象が強くなるので、活動的な方やクリエイティブな仕事をしている方はナローラペルを、管理職等威厳や風格を必要とされるかたはワイドラペルを選ばれる方が多かったりします。

他にも、気を付ける点としてネクタイはラペル幅と同じ太さが最もバランスがよく、ワイドラペルにナロータイや、ナローラペルにワイドタイはバランスを欠いてしまうのでご注意ください。

次に上襟つまりカラーですがこちらで注意していただきたいのがこちら。

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後ろから見たときにジャケットの襟からシャツ襟が1㎝~1.5㎝出ているものがバランスが良いとされているのです。またこだわる方は例えばシャツ襟が1.5㎝出ているとしたら、袖からのぞくシャツも1.5㎝に合わせたりします。

また後襟の下に皺ができる場合は、「月皺」といってみる人が見たらジャケットが身体に合っていないのがすぐにばれてしまうちょっと恥ずかしい皺なので、できる事ならショップ店員にお願いするか、お直し屋さんに持って行って取ってもらってください。

そしてもう一つ大事なのがゴージライン
実はこの位置も印象を左右する非常に大事なものなのです。こちらもラペル同様ブランドやシーズンによっても変わってきます。一般的にゴージラインは「高め」「低め」といった様に表現されます。
ゴージラインが高めにある場合は、カラーとラペルの境目の線が顔の近くに来る分、着ている人の顔や表情を目立たせてくれるので、弁護士や政治家、またはテレビに出るような、自分の顔を売りとしている方にお勧めなディテールです。
またゴージラインが低めにある場合は反対に相手が顔だけでなく全体に目がいくようになるので、丸顔等顔の輪郭に特徴のある方や、全体的に柔らかさを演出したい方にお勧めです。

どうですか?襟一つ取っただけでもこれだけ細かい表現の仕方があるんです。
ちょっとジャケットに対する見方が変わってきたでしょうか?

では次に参りましょう

先ほどカラーのところで少し触れましたが袖です。袖にもさまざまなディテールがあるのです。

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まずは写真のようなタイプの飾りボタン。これは字のごとくボタンが飾りとしてついているだけなので、掛けたり外したりはできません。反対にちゃんと掛け外しができるものを、本切羽といいます。本切羽のものですとわざと第一釦だけ外したり、全部外して袖をめくる等ちょっとした遊びができるので、通の人が好んだりします。
また飾りボタンにもボタンが少しずつ重なって着いているキッスボタンなんてものもあります。ボタン同士が重なっていることからキッスボタンなんて洒落てますよね。

そして注意していただきたいのがこちら

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クラシックな着こなしとしては後襟と同じく、腕を下した時にジャケットの袖からシャツの袖が1㎝~1.5㎝出るのがバランスが良いとされています。繰り返しになりますが、襟のシャツの露出部分と袖のシャツの露出部分が同じ長さですと一番バランスがよくなります。

たまにオジサマの中に、親指の付け根あたりまでジャケットの袖がきている方がいらっしゃいますが、どうしても着られている感がしてしまいますよね。
シャツが見えると見えないとでは全体のバランスの印象が全然変わってくるので、ご注意ください。

では次に着丈、裾についてお話しいたします。この着丈というのはジャケットの首の付け根部分から裾にかけての長さのことを指します。
最近はメンズファッションでも着丈が短いものが流行っていますが、ここで皆様に注意していただきたいのは、短すぎるのはNGということ。最近モードブランドでこの傾向が見らえたため、日本のブランドやスーツ量販店がこぞって取り扱い始めましたが、後ろから見たときにお尻がまるまる見えるジャケットはクラシックでは完全にOUTです。
基本的にクラシックにおけるベストな着丈の長さはお尻がすっぽり隠れる長さなのです。ここ最近では欧州でも短めは流行りましたがそれでもお尻半分(ヒップトップあたり)までが限界です。
そもそもジャケットの着丈が極端に短いデザインのものは、メンズジャケットのディテールにおいて唯一レディースのデザインを取り入れたものと言われていますので、ヨーロッパなどではお尻が出ているジャケットを着ている人はゲイと思われることもあるそうです…ご注意を。
そしてジャケットの着丈は短い方が、若々しい、足が長く見える等ファッション雑誌などでも言われますが実はそんなことはありません。むしろ丈が短すぎて足の付け根が見えてしまうので、最近これまた流行の裾丈短めと合わせると短い人はより短く見えてしまいます。実はクラシックな丈でも、ジャケットウエスト部分の絞り位置のバランス取りで足を長く見せることは可能なのです。

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あと裾の部分で大事なのがベント。これはジャケットの後ろ裾部分にある切れ込みのことです。ここでも主要な3種類をご紹介いたします。

1. ノーベント

ノーベントは裾の切れ込みが無いディテールを指します。通常のジャケットの中では最もフォーマルとされておりエレガントな仕上がりになっているが、反対に動きやすさは損なわれます。

2. センターベント

ジャケット背面の中央の縫い目に沿って裾から切れ込みが入っているディテールを指します。シングルジャケットには見られますが、ダブルジャケットにはあまり使用しません。昔の乗馬服はこのセンターベントを深くとって乗馬時に動きやすくしていたそうです。

3. サイドベンツ

両脇に切れ込みを入れることで動きやすさと軽快さがでるディテールです。見た目の軽さ動きやすさがありビジネススーツ等、今最も使われているディテールです。*上の写真がこのディテールです。

このベントに関してはほとんど個人の好みが強く、よっぽど特殊な場所でなければどのディテールであってもほとんど問題はありません。

最後にジャケットを着る際の注意をいくつか。

まず意外に知らない人が多いジャケットのボタンを留める場所です。

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二つボタンの場合は上のボタンのみを留め、三つボタンジャケットの場合は上二つのみを留めるのが間違いのない着方です。意外と電車や街中でも全部留めているサラリーマンを多く見かけるのでご注意ください。
また「段返り」というイタリア特有のディテールで三つボタンの一番上がラペルに巻き込まれているような形のものがありますが、このディテールのジャケットをお持ちの方は真ん中のボタンのみを留めてください。

そしてこのボタンを留めるということに関してもう一つ気を付けなければいけないのが、座った時です。

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どちらが正しいかお分かりになりますか?

正解は右の画像です。
立っているときはもちろんジャケットのボタンは留めるのがフォーマルな場面での礼儀ですが、座るときもそのまま留めたまま座っている方が実は凄く多いんです。テレビなんかでも意外と多いんですよこれ!

目上の方の前ではボタンをはずす行為が失礼にあたると思いがちですが、留めたまま座るとお腹周りに皺が寄って当然着ている側も窮屈なのですが、見ている側も窮屈そうに感じて疲れてしまいます。それにジャケットは元々着ているときに無駄なシワがないものが良いものとされているので、思いっきり皺が寄ってしまう使用の仕方はあまり良しとされていません。

 

 さていかがでしたでしょうか、ジャケット一つとってもこんなにも表現の仕方や注意する点があるんです。と言っても今回ご紹介させていただいたのは主要な部分のみなので、実はまだまだご紹介できてない沢山のディテールもあるんですよ。それはまた次の機会ということで…

ここまでお読みになって気付かれた方もいるかもしれませんが、紳士服はそれぞれのディテールにおいて、数㎝~数㎜の中で個々が表現をしています。元々女性の服ほど種類が無く、さらにほとんどの装飾が許されない男性服は、この僅かな差の中でそれぞれが個性を主張してきたのです。

スーツならなんでもいい、とりあえずジャケットを着ておけば大丈夫、きっとこう思って着ている人は少なくないと思います。
相手に誠意を伝え、自分という人間を知ってもらう、これが会話をする前から相手に伝えることができたらその後会話はどのように変化していくでしょうか。ジャケットはそれをサポートしてくれる非常に大切なものです。
皆様も「たかが」と思わず、こちらを参考に私生活や仕事の際に「ジャケット」少し気を使ってみてくださいね。

きっとはまる人ははまってしまいますよ♪

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